「ひみつのアッコちゃん」は、鏡の精から魔法のコンパクトを授かった小学生の女の子がなりたい姿に変身するストーリー。赤塚不二夫の人気コミックが2012年に綾瀬はるかを主演に迎えて、実写映画化された。
『映画 ひみつのアッコちゃん』は『愛唄 —約束のナクヒト-』の川村泰祐監督がメガホンを取り、買収問題に揺れる化粧品会社を舞台に、仕事に恋に奮闘する主人公の姿をコミカルに描く。
主演の岡田将生が演じる早瀬が勤める化粧品会社の社名を”AKATSUKA”としたり、作品内でアニメ版の曲をアレンジして使うなど、映画のあちこちに原作やアニメ版へのオマージュが垣間見える。
なりたいものになれる魔法のコンパクトを鏡の精(香川照之)からもらい、10歳の小学生から22歳の大学生に変身したアッコこと加賀美あつ子(綾瀬はるか)。思わぬことから化粧品会社AKATSUKAで商品開発を手掛ける早瀬尚人(岡田将生)に気に入られ、AKATSUKAでアルバイトを始めた。最初は失敗ばかりのアッコだったが、早瀬だけは彼女の奇抜なアイデアを評価し、2人の距離は縮まっていく。
一方、業績が低迷していたAKATSUKAではクーデターを起こして前社長(大杉漣)を関連会社に飛ばした熱海専務(谷原章介)が実権を握り、ゴールド工業の鬼頭(鹿賀丈史)が申し出た増資を受けるよう社内調整をしていた。しかし、鬼頭には腹黒い思惑があった・・・。
アニメ版ではアッコちゃんの身の回りの事件が描かれることが多いが、本作は大人に変身したアッコちゃんが企業の買収劇に巻き込まれる設定になっている。
とはいえ、10歳のアッコちゃんには大人たちがビジネスシーンで使う用語が分からない。会社の「実権」は「理科の実験のこと?」、「資本」は「シフォンケーキ?」といった具合だ。
そんなときは親友に電話を掛け、言葉の意味や正しい知識を教えてもらう。分からなかったことが分かるようになったときの〝大人の″アッコちゃんの表情がパッと明るくなるところが、またいい。新しい知識が増える楽しみは子どもも大人も同じ。そう思わせる演出だ。
アッコちゃんは筆頭株主が大きな力を持っていると知り、助けを求めに行く。しかし、「趣味で株主をやっているわけではない。倒産して株券が紙きれになるくらいなら、出資してくれる企業は大歓迎」「志なんていいから、早く業績を改善して株価を上げてちょうだい。気持ちだけでは会社は成り立たない」と叱責される。株主として当然の考えを学んだアッコちゃん。買収劇を食い止める妙案は浮かばず、株主総会の日を迎えた。
現役員の解任動議を提出する早瀬ら社員と、ゴールド工業の関係者が会場でつばぜり合いを繰り広げる中、アッコちゃんが壇上にのぼり「人の意見は聞きなさいと小学校で教わらなかったの?」「みんなのために何がいいのか、もう1回自由に考えてみましょう」と叫ぶ。専務派からの「小学校の学級会じゃないんだよ」というやじに、おもむろに立ち上がった筆頭株主が語り始めた。企業はなぜあるのか? 株主とは何か? 本作の見せ場である。
「たった一つの真実見抜く、見た目は子ども、頭脳は大人」は名探偵コナンのキャッチコピーだが、アッコちゃんはその逆。見た目は22歳の大学生だが、知識と経験は10歳の小学生。この複雑な役どころを、綾瀬はるかだからこその可憐さと健気さで無理なく見せてしまう。役作りと言えばそれまでだが、綾瀬はるかワールドに引き込まれる快感さえ覚える。
アッコちゃんは魔法のコンパクトを使って、前社長や専務にも変身してしまう。前社長を演じた、在りし日の大杉漣が綾瀬はるかに負けず劣らずのかわいらしさを見せる。ぜひ、映画で確認してほしいシーンだ。
ちなみに変身の呪文は「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、〇〇になあれ」。
では、元に戻る呪文は?
文:堀木 三紀(映画ライター)
『映画 ひみつのアッコちゃん』(2012年)

監督:川村泰祐
脚本:山口雅俊、大森美香、福間正浩
原作者:赤塚不二夫
音楽:遠藤浩二
出演者:綾瀬はるか、岡田将生、谷原章介、吹石一恵、塚地武雅、大杉漣、堀内敬子、肘井美佳、内田春菊、柿澤勇人
©赤塚不二夫/2012「映画 ひみつのアッコちゃん」製作委員会
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