東芝は本日(8月24日)の経営会議で、半導体事業を月内(8月中です)に売買契約締結するために、ウエスタンデジタル(以下、WD)陣営と優先的に協議することを決めたと報じられています。
いかにも東芝が自発的にWDと協議を始めるようなニュアンスですが、実際はかなり違っているはずです。来年3月までに債務超過を解消するよう必死に圧力をかける銀行や、何とか交渉をリードしているように見せかけたいだけの経済産業省や産業革新機構に挟まれて、6月下旬に優先交渉権を与えた日米韓連合との交渉が全く進展しない中での精一杯の「強がり」のようです。
そもそも半導体事業売却を差し止めているWDを放置したまま、日米韓連合との売却交渉など進展するはずがありません。買収ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(以下、KKR)がそのWDを抱き込んでいる以上、そのKKR・WD連合に徹底的に買い叩かれるか、時間切れとなって上場廃止となるかの「2択」でしかなくなっていたはずです。
それでも経済産業省や産業革新機構が日米韓連合にこだわった理由は、連合をとりまとめるベインキャピタルが(見せかけだけですが)日本サイドに半導体事業会社の議決権の過半を渡すという案で合意できそうだったからです。
しかしKKRはベインキャピタルに比べればはるかに「えげつない」ため、ここまでくるとかなり強気で交渉に出てくるはずで、このまますんなり売買成立となるかも微妙です。
まず買収金額は日米韓連合の2兆円に対し、KKR・WD連合は1兆9000億円と伝えられていますが、たぶん提示は「もっと安い」はずです。そして大変に情けないことに産業革新機構や政策投資銀行がこのKKR・WDに加わるようですが、そこで十分な議決権を確保できるはずがなく、単なる「資金提供者」となってしまう恐れがあります。
だいたいKKRにしてもベインキャピタルにしても、自らの出資分のうち自己資金は3分の1ほどで残りは借り入れますが、買収が成功するとその借入れを被買収会社(ここでは東芝の半導体事業会社)に押し付けて返済させるため、取得した株式の一部を売却するだけで自己資金はすべて回収できてしまいます。あとはコストがタダ以下になった株式を追加売却して「ボロ儲け」するか、同じく会社を支配し続けることになります。
ファンド主導で買収された会社は(繰り返しですが東芝の半導体事業会社のことです)、これから設備投資も人件費も極限までケチり、ファンドが自らを買収した際の借入れを最優先に返済し続けることになります。
それでは、東芝はそうまでしてファンド主体の相手に半導体事業を売却しなければならないのでしょうか?来年3月までに債務超過を解消して上場を維持しなければならないとの前提で考えてみます。
まず本年3月月末時点の債務超過額は5500億円ほどで、今期通年の期間損益は1000億円をこえる利益と予想されていますが、とりあえずゼロと仮定します。
本年4月1日付けで分離した半導体事業の帳簿価格は7000億円とされるため、単純に考えるとこれを5500億円上回る価格で売却できればいいことになります。しかし上場会社の財務会計と税務会計は違うもので、今期に東芝が使える税務上の赤字があるかどうかがわかりません。経験的には税務上の赤字はなく半導体事業の売却益にまるまる課税されるような気がします。
だとするとやはり2兆円近い価格で売却しなければなりません。しかもここでかかる税金は(税務上の赤字がないとして)まるまる社外流出となり、株主資本を棄損させます。つまり半導体事業を売却しなければ必要のない社外流出となります。
一部の報道では、もし半導体事業の売却が間に合わなければ、その半導体事業を新規上場させるとアイデアまで出ていますが、新規上場がそんな短期間で物理的に不可能であることは別にしても、やはり東芝の売却益となるため同じことです。
それでは(とりあえず)半導体事業の売却は一旦やめて、最大5500億円の公募増資にしたらどうでしょう?産業革新機構も政策投資銀行もそれぞれ3000億円を(KKRが主導する)半導体事業に出資するつもりであるなら、単純に東芝本体の公募増資を引き受ければ済む話です。税金もかからずKKRも必要なくWDと揉めることもありません。
出光興産のようにヘッジファンドに貸株を調達されて徹底的に売り叩かれないように、海外の募集分をゼロにして国内勢だけで引き受ければよいのです。
少し頭を冷やして考えてみたらどうでしょう?
本記事は、2017.8.25公開「闇株新聞」より転載しております。

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