またしても、監査業界の「甘さ」が露わになった。金融庁は1月27日、中堅の監査法人ハイビスカスに業務改善命令の行政処分を下した。同法人は10年前にも業務停止・改善命令を受けているが、業務の不当性は何ら変わっていなかったことになる。監査業界は公認会計士の「誤表記」が問題になっており、自浄能力を問う声も強まりそうだ。
ハイビスカスに対しては2022年6月、公認会計士・監査審査会が行政処分などの措置を勧告。金融庁も業務・品質管理態勢や個別監査業務の不当性を認めた。業務改善命令には監査ファイルの最終的な整理や現行の監査基準に準拠した監査手続きを実施するための態勢強化などが含まれており、極めて基本的な業務すら満足にできていない実態が見て取れる。
2013年6月の業務停止・改善命令では、札幌の金融会社の監査業務の際、売り上げの過大計上など重大な虚偽のある財務書類を問題なしと証明したことなどを理由に処分された。ところが、再度の処分でも「業務の遂行に際し法令、倫理規則、内部規定などを順守する意識が共有されていない」と断定され、旧態依然の事務所運営を続けていたことが露呈した。
しかも、今回の処分を前に金融庁から検査実施日を通知されたハイビスカスは、検査官に品質管理関連資料を提出するまでの間、一部の社員と職員が事後的に検査対象資料を作成し、その事実を隠したまま検査官に提出。この際、あとから作った監査調書を監査ファイルに差し込むなどの不正を働いたことも発覚した。
監査業界では2022年7月以降、大手監査法人を含む18事務所が公認会計士の資格のない職員を有価証券報告書などの監査書類に「公認会計士」と表記していたことが明らかになった。自主規制団体の日本公認会計士協会は「認識不足」「確認漏れ」を原因に挙げたが、無資格の本人が誤りを認識していながら修正されなかったケースなども判明している。
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過去5年分にも及ぶ顧客企業数社の有価証券報告書で同様の過ちを繰り返していた監査法人もあった「誤表記」と、二度の処分を受けた同監査法人の問題に共通するのは、およそ初歩的なミスを改善できなかった点にある。ずさんな業務を放置した状態が許されるように見えてしまう以上、監査業界が「無法地帯」と非難されても仕方ないだろう。
ハイビスカスは10年かかっても自浄能力を発揮できなかったことになるが、自社のウェブサイトでは「今回の行政処分を真摯に受け止め、資本市場発展のため、社会インフラとしての役割を果たしてまいる所存です。」とコメントした。
しかし、前回の業務改善命令に基づく取り組み内容はおろか、今回が“二度目”の処分だったという事実についても全く触れていない。さらに「今回の行政処分には、業務停止処分は含まれておらず、業務改善命令によって当法人の業務に直接支障が生じることは見込まれておりません」とも。
世論を見渡せば「ここまで不備があっても業務停止にならないのがすごい。一般企業ならつぶれかねない」「監査法人への処分は甘い」など皮肉と怒りが入り交じった反応が相次いでいる。
2022年12月に日本公認会計士協会が「必要に応じて個人・法人の懲戒処分を検討する」と表明した「誤表記」問題も、その後の明確な対応は示されていない。
非財務情報を含む上場企業の開示内容が増え、「資本市場の番人」と称される監査法人の役割がますます重要になる中、金融庁の監督・処分の厳格化が求められるのは必至の情勢だ。
文:M&A Online編集部
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