では、IFRSの方が優れているとして近づいていく方向性なのであれば、なぜ全ての上場企業にIFRSを適用しないのか、IFRSを適用している企業とそうでない企業は物差しが違うので、投資家が比べられないのではないか、と言った声もあります。またのれんの会計処理に代表されますが、規則償却を求める日本基準の方が、財務諸表の健全性が増すという意見もあり、国際会計基準審議会(IASB)が、のれんの償却を検討し始めており、一体会計基準として何が正しいのか、という疑問もわきます。
これは、もっと大きな時間軸で会計基準の変遷を辿ると、正解が少し見えて来る気がします。つまり、元々会計は「現金主義」からスタートしています。

複式簿記会計のスタート時から発生主義はあったという話もありますが、複式簿記が着目されるようになり始めた中世ヨーロッパでは、航海のプロジェクト毎の収支計算が重要であったこと、事業も小規模なものが多く、取引も現金取引が多かったため、現金主義で十分でした。
そこから、掛け取引や手形取引が増大し、企業規模が大きくなって利害関係者も増えて会計期間ごとの正確な損益計算の必要性が出てきたり、また産業革命以降設備投資額も巨額になって減価償却の重要性が増した、あるいは退職金制度が作られる等、経済活動の複雑化とともに、発生主義の必要性が徐々に大きくなってきた歴史があります。
そして近年は、機関投資家の発達とともに、投資対象としての企業評価の重要性が増したこと、M&Aが活性化してきたこと等が、企業そのものを取引対象として時価評価する重要性が高まってきたことにより、時価主義に偏重してきていると言う見方もあります。また会社を継続企業と見ず、清算前提であれば、清算価値としての時価評価が正しい会計基準ということになります。
つまり、会計(学)とは社会科学であり、物質的な正確性のような、唯一の正解がある自然科学と異なり、社会科学は時代により、また使い手の目的や価値観によっても、正しさが違うものなのです。
但し、会計がお金を扱うものである以上、1つだけ真理と言えるものがあります。それは、会社が設立されて(株主から出資を集めて)から清算される(全ての財産を現金化して株主に払い戻す)までの収支と、同期間の損益合計は必ず一致するということです。
損益計算書は、原則として未来永劫存続する、継続企業を前提として人為的に、通常は1年間で会計期間を区切り(最小単位としては日次決算の1日単位)、利益を計算するためのものです。それらの各会計期間を繋ぐための一時的な財務諸表が、貸借対照表です。全期間の収支と損益が一致するという真理を前提にすれば、極論すると会計処理としてどの方法を用いたかは重要ではなく、同じ方法を毎回適用するという継続性こそが最も重要だと言えます。
ましてや、プリンシプルベースで、各社の会計処理方法や注記を含めた開示は、同業種であっても乖離する可能性は十分あります。ルールベースでは、開示を含めて横並びで、金太郎あめを切ったような内容であったため、財務諸表の読み手に取って、企業間の比較は容易でした。
IFRSでは、読み手が会社の会計方針をしっかりと理解(そのために会計処理の方法については詳細に記述されます)しなければならない上、注記の形式も各社まちまちであるため、ルールベースに比べて、企業間の比較可能性を犠牲にしていると言えます。その分個々の会社の状況を深く分析し、トレンドを比較するためには、各社の会計方針を細かく記載し、それらを継続して適用することが重要なのです。
管理すべき経過勘定の量が膨大となる場合、経過勘定をどこまで細かく処理すべきでしょうか?税務上、一定の要件を満たす前払費用は支払時点で一括で損金計上することが認められています。
不正防止だけでなく、ミスを防止・発見するのも内部統制の大切な役割です。今回は、形骸化しがちといわれる「内部統制の構築の仕方」について考えてみます。
日産自動車のゴーン元会長が会社法違反(特別背任)容疑で4度目の逮捕が行われました。しかし一方で、日産自動車の有価証券報告書虚偽記載の話をあまり聞かなくなったので詳細を追ってみたいと思います。
内部統制や内部監査に係わる方であれば、不正のトライアングル(三角形)の一つを構成する要素として動機(プレッシャー)という言葉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
経理部門における役割は、開示制度が大きく変わってきたここ十数年は財務会計が重視されていました。それが一段落して、管理会計にも一定の役割を果たすことが求められているという流れがあるようです。
今回の会計コラムでは、「収益認識に関する会計基準」における価格の扱いと、商品やサービスの値決めについて取り上げます。
親会社と子会社からなる企業グループにおいて、各社の会計処理は統一しておく必要があるのでしょうか。親会社と子会社の会計処理について確認してみたいと思います。
公認会計士・監査審査会は中堅の監査法人アヴァンティアに対し、運営が著しく不当であるとして金融庁に行政処分などの措置を講じるよう勧告した。
生産性向上が求められるのは製造・生産の現場だけでなく、財務経理の業務についても同様です。言葉を変えれば業務改善ですが、今回は財務経理業務の改善について考えてみたいと思います。
仮想通貨による資金調達方法、ICO(Initial Coin Offering)を紹介。会計処理上でのICOの考え方、ICOを行ったメタップスの会計処理の事例も交えながら考察します。
東芝の一件で注目を集めた「監査意見」という言葉。その概要を解説した上で、東芝の監査意見をはじめ、監査法人の実情やその付き合い方について、考察します。
近年、海外では「金融機関」がCVCを設立するという動きが見られている。金融機関がCVCを設立することの意味は何なのか。日本の金融機関の動向にも触れながら解説したい。
4回にわたり「連結会計とM&A」について解説してきました。最終回は、M&Aが行われた際に、その態様(スキーム)によってどのような連結会計処理が必要となるか紹介したいと思います。