ビズサプリの泉です。今回は、中小企業の経理業務について考えてみたいと思います。
そもそも、中小企業というのはどういう会社でしょうか。法律上、いくつか定義があります。
| 中小法人 | 法人税法 | 普通法人のうち各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの |
| 中小企業者 | 租税特別措置法 | (1)資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人 ・その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人 ・上記のほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている法人 (2)資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人 |
| 中小企業者 | 中小企業基本法 | 業種によって条件は異なるが、例えば、卸売業であれば、資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
今回は、厳密に定義するのではなく、非上場企業でIPO準備会社や上場会社の子会社ではない、典型的なオーナー企業で従業員30人~50人未満ぐらいの会社ということで考えてみたいと思います。
以前のコラムでも書いたとおり、従業員50人規模の会社は、経営者が各人に指示を与えるのが難しくなるため、中間管理職がおかれ組織として業務の分業化や組織化が進んでいきます。
管理部門から経理部門が分離され、記帳や支払い、経費精算といったいわゆる経理業務の専任担当者がおかれます。
会社の事業も拡大し、業績見込みや資金繰りなどそれまでは経営者が頭のなかで把握できていたことが徐々にわからなくなり、経理担当者は必要に応じて、資金繰り表などを経営者に提出することになります。
経理は「経営の羅針盤」とよくいわれますが、実際に羅針盤として重要性が高くなるのは、それまで経営者が見える範囲ですべてかじ取りをしていたところ、それが難しくなるこのフェーズだといえます。
業務経験上、経営者との話のなかで具体的に気にするのは次の3点です。
・会社が儲かっているか ⇒業績
・資金ショートしないか ⇒資金繰り
・できるだけ税金を少なくしたい ⇒節税
経営者は当然、儲かっているかを知りたいと思っており業績を報告することが必要となります。
もう少し具体的にいうと、会社の業績が今どういう状況かを把握し、儲かっているあるいは儲かっていない場合にどういう手を打つかの意思決定をするために業績の報告を必要とします。身近な例でいえば、商品の販売価格の値上げ・値下げや新店の出店の意思決定などとなります。
ここでいう儲かっていると儲かっていないというのは、単に黒字赤字だけでなく、「想定より」売上や利益がでているかでていないか、ということになります。ということは、少なくとも粗々でも構わないので、想定となるべき予算的なものを作り、月次決算により実績との比較をすることが必要になります。
月次決算において前払費用などの経過勘定や償却費を均してできるだけ発生主義にしたほうがいいという意見もありますが、私は上記のとおり予算との比較をすることが重要であることとすると、概算や均した費用は計上せず、支払ベースでの比較としたほうが、予算が直観的に立てやすいとともに実績との比較もしやすくなると考えます。
また、年次決算と異なり月次決算を行う理由は意思決定のためですので、意思決定が誤らない程度の精度でよく、業績報告(月次締め日)をできるだけ早くすることが重要となります。月次決算早期化のためにはできるだけ作業を減らすほうがよいため、経過勘定の処理などはできるだけ避けたほうがよいといえます。
会社の経営において、資金繰りは最も重要な項目の1つであり、たいていの業種において売上の入金よりも仕入や設備投資などの支払のほうが先行するため、経営者は常に資金繰りを気にしています。
当然ですが、資金繰りは将来に関することですので、もちろん、将来予測のために実績を勘案しますが、実績それ自体はそれほど気にしないことになります。
一般的な資金繰り表では、現在の現預金残高に予算に基づく収支予定を勘案することにより、将来の現預金残高を算定します。もし不足するようであれば借入などの調達を検討することになります。
業績把握ための予算と資金繰り表作成のための予算を2重で作成にならないように、予算はできるだけキャッシュベースになるように経過勘定などは利用しないほうがよいことになります。
利益が多く出ている会社において、経営者がもう1つ気にするのは節税です。
税金の計算は実績だけに基づいているように思えますが、節税は利益が予想される段階で事前にアクションを起こすことが必要な場合が多く、決算日をこえたあとでは打つ手が限られます。
事前という意味では、消費税の簡易課税の有利不利や役員報酬はほぼ事業年度の始まる前、始まった直後くらいですし、備品を購入したり、倒産防止共済や保険などの加入についても利益が概ねみえてきた時期に検討することになります。
経理はどうしても、実績の正確な計上というところに注力しがちです。もちろん、あまりにも不正確な場合、羅針盤にはなりえませんので必要ではあるものの、上記で述べた通り実績のみならず、将来の予測が大変重要といえます。
もちろん、上場会社のような十分な人的リソースのない中小企業において予算を策定することはスキル的にもリソース的にも難しいですが、予算的なものを作成し、きちんと比較、年度末の着地見込を示すことが中小企業の経理部門においても重要な業務ではないでしょうか?
文:泉 光一郎(公認会計士・税理士)
ビズサプリグループ メルマガバックナンバー(vol.124 2020.9.23)より転載
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