観る者の心に切なさと温かな余韻をもたらす『ホテルローヤル』
北海道・釧路湿原のラブホテルを舞台に、ホテルの盛衰と経営者一家や従業員、訪れた客たちの悲喜こもごもの人生を描く。累計発行部数100万部のベストセラー小説『ホテルローヤル』が映画化された。
映画『黒部の太陽(1968年)』は、黒部第四発電所建設に取り組んだ男達の戦いの日々を描いた木本正次の小説を映画化。三船敏郎と石原裕次郎の二大映画スターの熱演を『日本列島』の熊井啓が見事に料理し、珠玉のヒューマンドラマに仕立てた。
関西電力は、富山県の黒部川上流に第四発電所(通称クロヨン)の建設を計画。トンネル貫通工事の工区を5つに分割し、それぞれを異なる建設会社へ委託した。第三工区を任された熊谷組では、かつて第三発電所の建設に携わった岩岡源三(辰巳柳太郎)が現場指揮を担当した。
現場労働者の犠牲を顧みない指揮をとる源三に息子・剛(石原裕次郎)は反発し疎遠となっていたが、源三との会談に同席していた建設事務所次長の北川(三船敏郎)と意気投合。身体の弱った源三に代わり現場の指揮をとる傍ら、北川の勧めで長女・由紀(樫山文枝)との交際をスタートさせた。
掘削は順調に進んだかに見えたが、剛が懸念していた破砕帯にさしかかると、立て続けに大量の地下水噴出と山崩れが発生。少し掘り進むたびにトンネルは崩落、大量に吹き出す水を止められず、掘削は頓挫してしまう。
現場では犠牲者も徐々に増加し、現場労働者が離脱。破砕帯を突破できず八方塞がりとなった剛と北川だったが、その矢先に関西電力社長の太田垣(滝沢修)は莫大な資金と最新技術の投入を決断する。
その後も崩落との戦いは続いたものの、高度な技術による掘削は実を結び、着工から約1年半を経てついにトンネルが開通。関係者が喜びに浸る中、北川は白血病に侵されていた次女・牧子(日色ともゑ)の死を知るのだった。
黒部ダム建設資材搬入のためのトンネル掘削が始まったのは、終戦から約10年が経過した1956年。高度経済成長期にさしかかって間もない時期において、この発電所の建設には、日本の未来を左右する大きな役割が背負わされていたことだろう。
本作で描かれたトンネル掘削は、その発電所建設を左右する工程。文字通り死と隣り合わせであった現場での戦いが、多くの無名俳優が見せる、実際の現場を撮影したのかと思うほどの熱演は必見の価値あり。
石原プロモーション設立50周年を記念し、2013年にようやくブルーレイ・DVDが解禁されたのだが、これには少々大人の事情がある。というのも公開当時(1968年)の映画業界には「五社協定」と呼ばれる取り決めがあり、映画配給会社間において、専属監督・俳優の引き抜きや貸し出しが禁じられていた。配給会社との専属契約を解除した監督・俳優は、その後他の配給会社でも活動できず、事実上の映画界追放となる。
このシステムに反旗を翻した石原裕次郎は、1962年に日活から独立し「石原プロモーション」を設立。しかし五社協定の壁は厚く、自ら映画を撮るという夢は果たせずにいた。
石原から遅れること2年、三船敏郎もまた「三船プロダクション」を設立。両氏がタッグを組み映画制作を行うと発表した。これに映画業界が猛反発し、当時の日活社長から「どの会社も配給はしない」と圧力をかけられたという。
しかし三船は関西電力から前売りチケット100万枚保証の確約を得、その上で配給権を日活に渡すと提案。これに日活が折れ、1968年、「黒部の太陽」が配給されることになったのである。
1960年にカラーテレビの本格放送が始まるなどテレビが勢いづいた時代であったとはいえ、まだまだ娯楽における映画の力は強かった。その巨大な敵に敢然と立ち向かった石原・三船の両氏と、困難にめげず難航工事に立ち向かう人々の熱い想いが作中で交錯する。
本作は3時間を超える長尺作品であるが、ふたりの鬼気迫る演技に圧倒され続け、あっという間の鑑賞体験となるだろう。
文:M&A Online編集部
<作品データ>
黒部の太陽
1968年・日本・196分

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