ロンドン(ロイター) – 証券監督者国際機構(IOSCO)は6月22日にのれんに関する公聴会の報告書を公表した。その中で企業に迅速なのれんの減損処理を促し、「過度に楽観的な」評価をしないよう求めるため、より厳格な会計規則が必要になる可能性を指摘した。
「のれん」とは「買収する企業」が「買収される企業」の純資産額を超えて支払うプレミアムのことで、少なくとも年に1度は見直し、必要があれば減損処理を実施しなくてはならない。
IOSCOは同報告書で「財務報告における優先課題は、のれんの減損処理が『Too little, too late(少なすぎ、遅すぎる)』な点と、減損テストに関する情報開示が不十分であるという点だ」と強調している。「Too little, too late」というのは、収益性に大きな問題が発生してから急遽(きょ)のれんを減損する企業の会計処理を指す。
IOSCOは「経営陣によるのれん価値評価が場合によっては過度に楽観的なのではないかと懸念しており、実施の観点から非常に困難だと見ている」とする。
IOSCOは米国、カナダ、中南米、欧州、アジアの証券規制当局を統括する組織。IOSCOによると、米国S&P50種構成企業におけるのれんの総額は金融危機の2008年には1兆6000億ドル(約231兆1900億円)だったが、2021年には2倍を超える3兆7000億ドル(約534兆6300億円)まで増加した。欧州連合(EU)の上場企業1477社では、2019年の総額は2013年比約50%増の1兆6000億ユーロ(約252兆1000億円)だった。
のれんの会計処理については長らく意見が分かれてきた。欧州で国際財務報告基準(IFRS)の適用を義務付けている国際会計基準審議会(IASB)は、のれんの規則について見直しを進めている。一方、米国財務会計基準審議会(FASB)は昨年、見直しの保留を決めた。
いずれの審議会も、かつての時間をかけて減損する償却制度に戻すことには反発しており、IASBはそれほど抜本的ではない微調整に焦点を絞って取り組んでいる。
IOSCOはIASBが「投資家が減損処理の情報をより多く得られるように、定期的な減損テストの実施後に減損処理についての情報開示を義務付けることも検討する可能性がある」と指摘している。
取材:ヒュー・ジョーンズ、編集:エレイン・ハードキャッスル
原文:REUTERS/翻訳:M&A Online
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国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、IFRSにおける企業買収の際ののれんについて、費用として計上する会計処理の導入を検討していることが明らかに。
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