編集部調べでは、「アクティビスト(物言う株主)」という明確な定義は存在しないようですが、一般的には株式を大量に取得したのち、経営陣に対し株主提案を行う”アクティブ”な活動をする株主のことを指します。有名なところでは、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)や、国内では旧村上ファンドなどがあります。アクティビストの多くは機関投資家ですが、なかにはアクティビスト戦略を好む個人投資家もいます。
世間一般では、アクティビストは怖い存在と思われがちのようですが、よくよく話を聞いてみると、「仕手筋」と混同されている方も多いようです。
そこで今回は、仕手筋とは何か。アクティビストを含む機関投資家とはどう違うのか、について解説したいと思います。
「仕手筋(してすじ)」とは、株式市場で投機的な売買を繰り返し、株価をつりあげようとする投資家グループのことです。取引方法によっては「意図的に相場を変動させた」とみなされ、金融商品取引法違反になることもあります。公正な価格形成を妨げ、ほかの投資家に損をさせるかもしれないからです。
株式市場には「相場師」と呼ばれるカリスマが存在し、手掛ける銘柄は「仕手株」と呼ばれて短期投資家が群がりました。1980年代に「誠備グループ」を率いた加藤暠氏が有名です。最盛期には4,000人もの会員を率い、丸善や宮地鐵工所、安藤建設といった銘柄を次々と仕掛けました。それらは何の材料もないのに株価が高騰し、「誠備銘柄」と呼ばれました。
同じ1980年代、「兜町の風雲児」と呼ばれ、投資ジャーナルを率いたのが中江滋樹氏。投資家からカネをだまし取ったとして、実刑判決を受けたこともあります。同氏について、この2月、都内の自宅アパート火災で死亡したことが報じられたのは記憶に新しいのではないでしょうか。
最近は、急騰株に飛びつき、短期で売買をおこなう投資家のことを「イナゴ」と呼びます。若手のデイトレーダーたちがLINEやオンラインサロンなどで情報交換しながら、ネット関連銘柄の上昇を演出している可能性があるのです。
「見せ玉(ぎょく)」と呼ばれる不正な手口で株価をつり上げたとして、2014年10月に東京地検特捜部は金融商品取引法違反(相場操縦)で、早稲田大学の非公認投資サークルOBの男性2人を在宅起訴しました。
同サークルでは、2009年にも株価操作の疑いで逮捕・起訴され、有罪判決が確定しています。短期間で2倍・3倍は当たり前で、なかには10倍に化ける「テンバガー」と呼ばれる銘柄もあります。
冒頭で申し上げたとおり、仕手筋と機関投資家は全く違います。
機関投資家とは、大きな資金を持っていて企業体で投資をおこなっている大口の投資家のことです。生命保険会社や信託銀行、投資顧問会社、年金基金などがあります。
機関投資家は、資金の出し手である「アセットオーナー(資産保有者)」と、資金提供者から運用を受託し、実際に投資を行う「アセットマネージャー(資産運用者)」に分かれます。
機関投資家は信用度が高い組織で、資金の出所もはっきりしています。資金の提供者に対して責任があるので、運用に対する合理的な理由も必要です。
一方、仕手筋は存在自体がはっきりしていません。「風説の流布」や「株価操縦」など非合法な取引をおこなうこともあります。市場の公正性と投資家の利益を損なうものとして、仕手筋は証券投資等監視委員会の取り締まり対象になります。
なお、金融商品取引法では、「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者」(金商法2条3項1号)を適格機関投資家と定義づけています。
仕手戦とは、仕手と呼ばれる投機家同士が、買い方と売り方に分かれて争うことです。買い方は、安値の株を大量に買い続けて株価を急激につり上げます。一方の売り方は信用取引を利用して株を大量に売り、株価をたたき落とそうとするのです。
仕手戦では、戦後間もない1950年、山一證券の大神一氏とヤマタネの山崎種二氏による旭硝子の仕手戦などが有名です。ただ、最近は証券取引等監視委員会による不正調査の強化や、外国人投資家の増加などにより、大規模な仕手戦は発生しにくくなっています。
さて、気になるのがM&Aへの影響です。上場企業がM&Aを実施する際に行う株価算定のバリュエーション(企業価値評価)に、「市場株価法」があります。これは、過去1~6カ月程度の市場価格をもとにした平均株価を評価額とします。市場株価法は、株価を平均して求めるので、客観性が高いといえるでしょう。
しかし、仕手筋が動いているなど不自然な動きがある銘柄には注意が必要です。なぜならば、市場評価法の評価結果が合理的といえないからです。仕手筋銘柄の疑いがある場合は、その動きの部分を排除する、期間を長めに取るなどの対策が必要になります。
文:M&A Online編集部
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