不正のトライアングル(動機・機会・正当化)について考える
内部統制や内部監査に係わる方であれば、不正のトライアングル(三角形)の一つを構成する要素として動機(プレッシャー)という言葉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
先述の通り、外食産業は人件費が増加傾向にある一方でなかなか値上げに踏み切れないジレンマにあり、かつ将来的には国内の市場規模がシュリンクして行く宿命にあります。このような課題に対して、明るい未来を築くにはどうしたらいいでしょうか?
まずは価格の引上げですが、今年は消費増税があり、税込み価格を上げないと、そのまま収支を圧迫しますので、更なる企業努力でコストを削減しなければなりません。ただその努力も限界がありますから、少なくとも本体価格は据え置きで、消費税が8%から10%になったことによる2%分だけ、消費者の負担が増えるというのが、無難な対応と考えられます。
但し日本の消費者は厳しい目を持っていますので、税込み価格が上がった途端に、商品を買ってくれなくなる可能性もあります。従って、増税だけの理由で価格を上げるような守りの値上げではなく、店舗に再投資したり、メニューをブラッシュアップする等、何かしら付加価値を高めて、消費者に納得してもらえるような形で、攻めの値上げをしていかなくてはならないと思います。そこには、全国一律同一価格ではなく、地域ごとの物価や給与水準、賃料水準、時期ごとの材料の仕入れ価格を反映した、より弾力的な価格設定も検討の余地があると思います。
ECサイトでは、時間ごとに価格が変動して収益の最大化を狙う、ダイナミックプライシングの時代に突入していますから、外食産業も、業界としてただ価格の安さを競うのではなく、中身と価格のバランス、いわゆるコストパフォーマンスで競争し、全体の価格を上げて行くような意識と具体的な施策が求められます。
人員不足や働き方改革による人件費の増加への対策としては、最近話題になっているフードテック、すなわち、機械やIT化を進めて行くことも1つの有力な解決方法だと思います。昔から炊飯ロボやオートフライヤー、炒飯マシン、食洗機、食券器等、単純で重労働な作業は、機械化することで人への負担を減らしてきました。未導入企業はこれらの導入を検討したり、オペレーションの見直しにより、機械化した方がいい作業の専用マシンの開発をすることも考えられます。最近、キッチンロボの会社を新たに立ち上げようとされている、若手起業家の方にお会いしましたが、この分野で課題解決を目指すテック企業がこれから多く誕生すると思います。
IT化の活用としては、外食の売上の機会損失を減らすには稼働率の向上が1つの解決策ですが、例えば、消費者が予めネットで注文して決済まで済ませ、来店時間を予約してその時間に財布を持たずスマホ1つで行って、客席に着くとすぐ料理が提供され、食べ終わるとそのまま帰ればいいような仕組みにすることで、リードタイムを短縮して稼働率を高められるとともに、消費者の利便性も固まります。ネット経由の仕組にすることで、顧客のデータベース化を推進し、ビッグデータの活用で新たなサービスに繋げられるかもしれません。
そして人口減少に対する解としては、国内市場に限れば、家庭で調理している領域にもっと切り込んでいくことでしょうか?中食と言われるような、持ち帰りの惣菜等、もっとテイクアウトできる業態やメニューを増やしたり、ウーバーイーツに代表される宅配での食事の提供を増やすことで、人口は減っても外食産業が関われる機会を増やすことが可能となります。
そして近年、すでに進出している外食企業が始めていますが、日本でチェーン化した業態の海外進出です。ラーメン屋や寿司店、牛丼、定食屋等、日本ならではの業態がすでに海外進出しています。
農林水産省の調査によると、2017年10月時点での海外の日本食レストラン数は11万8千店であり、これはその約2年前(2015年7月:8万9千店)から3割の増加とのことです。これは、2013年12月に、『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されたことや、近年訪日観光客が増加して、日本食への興味が増大していることが影響していると考えられます。
但し、11万8千店の日本食レストランのうち、日本企業が海外に進出して出店している数は多くないと思います。もちろん、日本人で海外に移住して出店しているケースもあると思いますが、大部分は現地資本のオリジナル和食レストランと考えられます。日本でのマクドナルドが約2,900店、KFCは約1,100店を国内で展開していますが、逆にこれほどの規模で、海外で出店している日本の外食企業の業態はまだないと思いますが、海外の職が日本で根付いたように、やり方によっては日本食を海外で根付かせることも可能と思います。
世界で日本食ブームとなっているのは日本の外食産業にとっては追い風です。食だけでなく、酒や焼酎といった日本独自の酒、食材も含めて、海外進出のチャンスだと思います。日本の外食業態が海外で根付き、店舗数を拡大して行くためには、ヘルシーで健康的なイメージ等、日本食のいいところを生かしながら、本格的な日本の味を広める一方で、メニューや味付けについては現地の嗜好に合わせることも必要と言えます。人口減少は日本の大きな課題であり、食以外でも将来的にマーケットを海外に求めて行かなければならいでしょうから、海外でも本格的な日本食が手軽に食べられる環境が増せば、日本人が積極的に海外に出て行く後押しになってくれると思います。
本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。
文:花房 幸範(株式会社ビズサプリ パートナー 公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー( vol.093 2019.3.20)より転載
内部統制や内部監査に係わる方であれば、不正のトライアングル(三角形)の一つを構成する要素として動機(プレッシャー)という言葉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
経理部門における役割は、開示制度が大きく変わってきたここ十数年は財務会計が重視されていました。それが一段落して、管理会計にも一定の役割を果たすことが求められているという流れがあるようです。
今回の会計コラムでは、「収益認識に関する会計基準」における価格の扱いと、商品やサービスの値決めについて取り上げます。
親会社と子会社からなる企業グループにおいて、各社の会計処理は統一しておく必要があるのでしょうか。親会社と子会社の会計処理について確認してみたいと思います。
公認会計士・監査審査会は中堅の監査法人アヴァンティアに対し、運営が著しく不当であるとして金融庁に行政処分などの措置を講じるよう勧告した。
生産性向上が求められるのは製造・生産の現場だけでなく、財務経理の業務についても同様です。言葉を変えれば業務改善ですが、今回は財務経理業務の改善について考えてみたいと思います。
仮想通貨による資金調達方法、ICO(Initial Coin Offering)を紹介。会計処理上でのICOの考え方、ICOを行ったメタップスの会計処理の事例も交えながら考察します。
東芝の一件で注目を集めた「監査意見」という言葉。その概要を解説した上で、東芝の監査意見をはじめ、監査法人の実情やその付き合い方について、考察します。
近年、海外では「金融機関」がCVCを設立するという動きが見られている。金融機関がCVCを設立することの意味は何なのか。日本の金融機関の動向にも触れながら解説したい。
4回にわたり「連結会計とM&A」について解説してきました。最終回は、M&Aが行われた際に、その態様(スキーム)によってどのような連結会計処理が必要となるか紹介したいと思います。
東証は上場企業に対して2017年3月期末から決算短信の簡素化を認ました。決算短信の自由度の向上について考えてみたいと思います。
日本取引所グループは、2016年の新規株式公開企業数が前年より約1割少ない84社になると発表しました。IPOが減少した理由について考えてみたいと思います。