株価が高騰しているにもかかわらず、株と違って配当のつかない貴金属価格も上昇している理由の一つに、金融破綻への警戒感がある。ただでさえ景気の足元が弱く、多額の財政出動によって不況を食い止めていた状況下にコロナ禍が世界経済を襲った。
国際通貨基金(IMF)によると、6月時点で各国政府による新型コロナ経済対策の規模が10兆ドル(約1070兆円)に達した。世界の国内総生産(GDP)に占める財政支出総額比率は、リーマン・ショックによる金融危機が深刻化した2009年の1.7%を2倍以上も上回るのではないかとの試算すらある。
さらにコロナ感染拡大の第2波に伴う追加財政出動もあり、景気低迷が長引いて「世界不況」の状況に陥れば、先進国でもデフォルト(債務不履行)が発生するリスクが高まる。そうなれば株式も通貨も暴落するのは必至だけに、株価や通貨価値とリンクしない「安全資産」の貴金属への資金流出が起こっているのだ。
「安全資産」ならば、金でも同じではないか?実は金にも「リスク」がある。1933年に米国のフランクリン・ルーズベルト大統領が「大統領令6102号」を公布し、国民が保有する金を1トロイオンス(約31.1グラム)当たり20.67ドルで政府に強制拠出することを命じたのだ。
米国政府は1934年の「金準備法」で金価格を同35ドルと定めたため、金を保有する国民から同14.33ドルを没収したことになる。当時は金本位制で、景気刺激策となるニューディール政策の資金を確保するために、金をかき集めなければならなかったという事情もあった。
管理通貨制度の下で金と通貨流通量がリンクしない現在では、こうした金の事実上の没収はありえないとの指摘もある。が、実際に国家財政が破綻した場合、政府が取りうる手段は国民財産の没収しかない。
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