ここでちょっと孟子の手を借りますが、孟子は孔子の時代よりのちの時代の人で、彼が学問をしているときすでに孔子は亡く、その弟子に教えを受けたとされています。それでいて、儒教では孔子に継いで重要な人物とされ、儒教を「孔孟の教え」と呼ぶほどです。
この孟子の考えでは、仁と義の関係は、どちらも仁の中にある2つの面ということになります。義は仁から出てきた、いわば切り口を変えた仁なのです。
孟子は、仁を人が持って生まれて備わっているものと位置づけ、義はあらゆる人が取るべき正しい道筋だと考えました。
このように、義には「正しい道」といった意味が含まれています。これは個人の考えの及ばない、いわば物理法則のようなもので、誰にとっても正しい道があるのだ、という前提があるのです。

仁はその人がこの世に生まれて活動するにあたってのビジョン・ミッションとすれば、義はこの世に歴然として存在する理屈、たとえば川は山から海へ流れ、物は引力によって地球に引っ張られ、人は老いて死ぬ、といった、私たちがいてもいなくても当然そうなっていく道筋のことです。ただし、こうした物理法則も条件によっては、当然ではない場面があることもいまの私たちは知っています。
このため、「世界共通の正しい道などというものは、存在しないのではないか?」と思われる人も多く、それぞれの立場(国、文化、性別など)から見て、いくつも正しさがあると考えるべきでしょう。
それぞれの正しさをぶつけ合って、屈服させ合うのではなく、相互理解によってより高い次元で共棲することが望ましいのです。
それでは「義」はいったい私たちにとって、どういうことなのか。コンプライアンスを守ることなのでしょうか? 次回、さらに考えていきましょう。
※『論語』の漢文、読み下し文は岩波文庫版・金谷治訳注に準拠しています。
文・舛本哲郎(ライター・行政書士)
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