前回に続き「税効果会計」について、ざっくりと説明をしてみます。今回は、税効果会計導入の歴史を中心にお話ししたいと思います。
繰延税金資産は、いわば「将来、減額できるかもしれない税金」を資産計上するようなものです。(将来のものですから)銀行預金残高のように、明確な残高が確認できるようなものはありません。
つまり、どこまで言っても「絶対に正しい数値」なんて出せません。逆に言えば、人間の「恣意性」が入る余地は十分にあります。
法人税はみなさん、御存知の通り、黒字の場合は課税されますが、赤字の場合にマイナスに応じた還付が受けられるわけではありません。(「欠損金の繰り戻し還付」という例外はありますが、中小企業あるいは解散時のみの特例です。しかし、この制度も、あくまでも過去に払った法人税の一部が戻るだけで、赤字が大きくでたからといって、法人税の還付がされるわけではありません。)
ですから、巨額の将来減算一時差異があるとしても、将来、その将来減算一時差異を上回る課税所得が無ければ資産価値は無いのです。ということは、資産価値が無いものを資産に計上することで「粉飾決算」に悪用することができてしまうのです。
そこで、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」では、繰延税金資産の回収可能性についてタックスプランニングなどの十分な検討を求めているのです。
税効果会計は2000年(平成12年)頃からの適用です。この2000年頃(あるいは少し前)は、バブル崩壊後の不良債権処理に金融機関が苦しんでいました。
金融機関も次々と破綻してしまいました。
1997年(平成9年) 北海道拓殖銀行
1998年(平成10年) 日本長期信用銀行、本債券信用銀行
1999年(平成11年) 国民銀行、幸福銀行、東京相和銀行、なみはや銀行、新潟中央銀行
2001年(平成13年) 石川銀行
2002年(平成14年) 中部銀行
2003年(平成15年) 足利銀行
当時の記憶はうろ覚えなんですが、BIS規制がどうたら、と騒がれていました。「教えて!にちぎん『いわゆるBIS規制とは何ですか?』 (日本銀行)」によると、1988年(昭和63年)に最初に策定されたバーゼルIでは、「銀行の自己資本比率の測定方法や、達成すべき最低水準(8%以上)が定められました。」とあります。
当時、まだ税効果会計が導入されていない時点では、日本の金融機関の自己資本比率がこの「8%」を達成できないと報道されていた記憶があります。
そして、銀行の不良債権処理に伴う巨額の税務上の繰越欠損金に対する繰延税金資産を計上することで、自己資本率を上げるための「国策」として「税効果会計」をアメリカから導入したのではないか、と個人的には思っています。
私が税理士試験で財務諸表論を勉強していた時代はまだ「取得原価主義」が主流でしたから、この税効果会計の制度を知った時は驚きました。
「えっ?”将来還ってくるかも知れない税金”を資産計上してるようなもんじゃん?これって、”実現主義”の観点からどうなの?」と思いました。「未確定のもの(債権ですらない)を資産に計上するなんてアリなの?」と。
さすがに繰延資産と同様、「配当財源規制 (会社法461条2項7号、会社計算規則158条)」はあるだろう、と思って調べてみたら、特に規制がかかっていないので、これもまたびっくりしました。
そもそも、繰延税金資産は”将来の税金支出が減るかもね”というものであって”将来入金(キャッシュイン)があるもの”ではありません。しかし、繰延税金資産は配当財源規制の対象では無いということは、繰延税金資産も配当可能利益に入れてしまって良いということになります。
もちろん、繰延税金資産は計上自体が慎重にすべき、ということでしょうが、それでも、配当財源規制の対象でない、ということは、配当をガンガンだして、その後、「実は繰延税金資産は価値がありませんでした」となった場合、会社の自己資本は欠損してしまいます。そういう意味では、株主にとっては得でも、債権者保護にはつながりません。
旧商法は「債権者保護」の見地が強い法律で、それはそれで良し悪しだったでしょうが、新会社法で税効果会計が導入され、この「繰延税金資産が配当規制の対象では無い」点については、私は今でも「?」と思っています。
この辺の「ユルユル感」もやっぱり銀行業界を救うための「国策」だったのでしょうか、という勘繰りさえしてしまいます。
と、ダラダラと書きましたが、要は私の税効果会計の導入に関する個人的感想は、
① 導入きっかけは「国策」
② 一応、理論的には「なるほどね」とも思うものの、、、
③ 繰延税金資産は恣意性が入る可能性があるので、資産に占める割合が大きい時は要注意
と思っています。
本日はここまでです。お読みいただきありがとうございました。
[著]節税ヒントがあるかもブログ メタボ税理士さん
[編集・改変]M&A Online編集部
本記事は、「節税ヒントがあるかもブログ」に掲載された記事を再編集しております。
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