公欲とはどのようなものでしょう。そもそも私たちは「私」からはじまっているので、「公」であり続けることなどできるでしょうか。少しでも公欲をメインに考えることができるような人間力を養うことは可能なのでしょうか。
心を霊と為す。其の条理の情識に動く。之を欲という。欲に公私有り。情識の条理に通ずるを公と為し、条理の情識に滞るを私と為す。自ら其の通滞(つうたい)を弁ずる者は、即便(すなわ)ち心の霊なり。(『言志後録』19 公欲と私欲)
●二つの欲
私たちの心は複雑だ。理性もあれば感情もある。感情から生まれるのが欲望だ。欲望には公欲と私欲がある。あなたにどうしても譲れない欲があるとして、それが筋道として正しいものなら、つまり理性と合致すれば公欲となる。筋道として正しいに違いないと鵜呑みにして強行しようとする欲は、理性と反発しあって私欲となる。合致するか反発するかは、複雑な心のなせるわざなのだ。

人の欲望は、生まれながらにして生じているわけではなく、心を持つことから始まるのです。旧約聖書で言えば、イブが禁断の果物を口にしたとき、心が生まれ欲望が生まれます。心が生まれる前の生物としての行動は、生存のために費やされます。生存したいという欲求は、ここで言う欲望ではなく、生きものすべての基本的な行動原理です。
でも、心があれば、「誰かのために生きる」といった欲望へと変化します。私のため、あなたのため、家族のため、会社のため、お客様のため、社会のため、と私欲からはじまって公欲へと発展していきます。
つまり、公欲はかなり後天的な欲望なので、それを自分の中心に据えるためには日頃から公欲を意識して考えなければなりません。
佐藤一斎は、欲望は感情から生まれるとしながらも、「情識の条理」か「条理の情識」かで、公私が分かれるとしています。残念ながら、佐藤一斎は『言志四録』の中で、情識とはなにか、条理とはなにかについてとくに述べていません。
辞書に照らせば、情識とは強情、頑固。条理は物事の筋道です。頑固さの中にも物事の筋道に合っている欲望は「公」。物事の筋道の中で頑固なままでいることを「私」とするのです。
私としては、このニュアンスを学ぶことが佐藤一斎の考えに近づくのだろうと思うものの、一般的に語るときにはなんとも言えぬわかりにくさがあるかもしれません。
最初、私も、公欲は自分を投げ打って達成したい欲で、私欲は自分のために達成したい欲なのかと思っていました。ですが、この言葉にはそうではない意味が含まれています。
誰にでもどうしても譲れない欲があります。それが筋道として正しいものなら、つまり理性と合致すれば公欲となります。一方、筋道として正しいに違いないと鵜呑みにして強行しようとする欲は私欲となってしまう。つまり、出発点がそもそも違う。
この考えでいけば、「私はなんの利益も得ないのです。正しいことをやるだけです」と言っていたとしても、自身の中から生まれたどうしても譲れないことが発端にあるわけではなく、ただ筋道として正しいからと信じ込んで主張するのだとすれば、それは私欲になってしまうのです。
いずれにせよ私たちの心のあり方によって、公と私のどちらに欲望が振れていくかは変わります。
この言葉は、『言志四録』をバイブルのように愛読したと言われる西郷隆盛が選んだ101条にも含まれているので、みなさんも自分のこととして解釈してみてはいかがでしょうか。
日々、こうした観点から、自分の言動をチェックしていくことで、より多くの人が納得してくれる可能性が高まるはずです。
次回からは、西郷隆盛が選んだ101条から、さらにM&A、経営や仕事にも大きく影響する言葉、人間力を磨く言葉を見つけていきましょう。
※漢文、読み下し文の引用、番号と見出しは『言志四録』(全四巻、講談社学術文庫、川上正光訳注)に準拠しています。
文:舛本哲郎(ライター・行政書士)
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