昨年、M&A Online編集部もジャニーズ事件で英BBCの取材を受けたが、企画趣旨について「これは芸能スキャンダルではなく、児童に対する性的虐待という人権問題だ」との説明があった。事実、英BBCの番組が放送されると日本でもジャニーズ事件は「人権問題」に変わり、大手マスメディアも大きく報じている。
このように外部環境が大きく変わったにもかかわらず、スマイルカンパニーが従来の「暗黙の了解」に基づく「忖度」行動を取ったがゆえに、事件が再びクローズアップされることになったのだ。同社が問題視した松尾氏の発言は、すでに多くの識者がマスメディアで指摘している内容であり、新味はない。無視していれば、世間で注目されることもなかっただろう。
同社が過度の「忖度」により松尾氏との契約を解除したとすれば、ジャニーズ事務所には「大迷惑」以外の何物でもない。事件が再燃しただけでなく、世間に「ジャニーズ事務所がスマイルカンパニーに圧力をかけたのではないか」との疑念を与えかねないからだ。
同様の事態は一般企業でも起こりうる。例えば大手企業が不祥事を起こしたのを受けて、下請け企業が「SNSで取引先の不祥事に一切触れるな」と通達を出したことが外部に漏れれば、「大手企業が取引停止をちらつかせて、下請けに口止めを強いた」と受け取られるだろう。それがマスメディアやSNSで拡散すれば、最も深刻な打撃を受けるのは「忖度」された大手企業だ。企業不祥事の危機管理として、過度な「忖度」の防止を視野に入れる必要がある。
そのために最も重要なのは、取引先や関係者に「不祥事を隠したがっている」との印象を持たれないようにすることだ。ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が動画で謝罪したのみで記者会見を開いていないのも、関係者には「不祥事を隠したがっている」と受け取られた可能性がある。
企業の不祥事対策は、「情報を積極的に開示し、問題点を徹底的に洗い出して、再発を防ぐ」のが鉄則だ。関係者による過度な「忖度」は、むしろ逆効果になりかねない。関係者にこうした「忖度」をさせないためにも、この鉄則を厳守すべきなのだ。
文:M&A Online
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またしても、監査業界の「甘さ」が露わになった。金融庁は1月27日、監査法人ハイビスカスに業務改善命令の行政処分を下した。同法人は10年前にも業務停止・改善命令を受けている。
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