株式併合により端数処理された元株主が株主総会議事録の閲覧を請求した事案に関する裁判例
今回は、株式併合に際して株式買取請求を行った者が価格決定前に仮払いを受けた場合における株主総会議事録の閲覧等請求の可否について判断した裁判例をご紹介します。
M&A:新株発行の差止め仮処分を認める近時の決定例(名古屋地決令和4年2月17日)
名古屋地裁は、令和4年2月17日、X社がY社による新株の発行(「本新株発行」)の差止め仮処分を求めた事案において、差止め仮処分を認める決定を行いました(「本決定」)。
本決定において、名古屋地裁は、①Y社の取締役会が本新株発行を決議した当時X社がY社の取締役の多数派の解任を目的とする臨時株主総会の招集を請求して経営権をめぐる争いが顕在化していたこと、②本新株発行はY社の既存の株主の議決権割合に重大な影響を及ぼすものであること、③本新株発行が現経営陣の多数派の解任が議案となっている株主総会の直前に行われ、その上、現経営陣と密接な関係を持ち、現経営陣の多数派の解任議案に反対を表明しているZ社に対して新株を発行し、かつ、会社法124条4項に基づき株主総会の議決権の基準日後に当該新株に議決権を付与することを予定するものであること、④Y社は本新株発行の目的として新規事業である宿泊施設事業及び借入金返済のための資金調達を主張するところ、当該資金使途は具体的であるが、資金調達の必要性がさほど差し迫ったものか疑問であるにもかかわらず、Y社の意思決定の態様が拙速であること等を理由に、本新株発行は、現経営陣の多数派の支配権の維持を主要な目的として行われたものと推認され「著しく不公正な方法」により行われたとして、新株発行の差止め仮処分を認めています。なお、本決定を受けて、Y社は、本新株発行を中止しています。
会社法210条2号が規定する「著しく不公正な方法」による新株発行であるとして差止め事由に該当するかどうかについては、新株発行の主要な目的は何か、また、当該目的が新株発行を正当化するに足りるものかという点を基準に判断が行われることが多く(いわゆる「主要目的ルール」)、実際の裁判所の運用としては、資金調達の必要性が認められれば、資金調達方法の選択については会社の裁量を広く認める傾向が強いとされてきましたが、本決定は、会社が主張する資金調達に一定の具体性が認められながらも、現経営陣の支配権維持目的が主要な目的であるとして差止め仮処分が認められた決定として、実務上参考になると思われます。
パートナー 大石 篤史
アソシエイト 松尾 博美
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